日本とブラジルはちょうど、地球の反対側に位置する。
だからというわけではないが、
日本では円安がすすむ一方で
ブラジルは現在、ドル安が進行している。
ドル安でうるおう企業もあれば、そうでない企業もある。
私が今回、ブラジルで訪問したいずれの企業も
ドル安のあおりを受けて、経営状況はかんばしくなかった。
行く先々で出る話と言えば、どこでもドルの話題ばかり。
「このままドル安が続くと、会社なんて来年までもたない」と、
経営者たちは一様に不安を口にした。
そして、私の滞在中にもドルは下がっていった。
出張も後半に入り、
あさってには日本へ帰国するという日に
ブラジル到着の翌日に訪問したある企業に再度、訪れることになった。
で、前回の訪問の時にいろいろと話を聞いた
研究スタッフの一人にもう一度、話を聞きたいとその会社の社長にお願いすると
「彼は辞めて、もう会社にはいない」とつれない返事。
あまりに急なことだったので、びっりして理由を尋ねたところ
「リストラ」だというのだ。
私たちが前回訪問した日からわずか1週間足らずの間に
その会社ではすでに5名の社員がリストラされていた。
私が会おうとした彼は優秀そうに見えたし、
社長も頼りにしているようにも見えた。
「今の状況というのは決して受注が減っているわけではない。
ただ、ドル安にやられているだけ。
だから、生産部門の人間を切ることはできない。
だが、彼は優秀ではあるが研究者に過ぎない。
切るなら、彼しかいなかった」
と、その社長は苦渋の表情を浮かべた。
それと同時にあの彼の穏やかでやさしげな語り口が思い出されてつらかった。
その一方で白トリフを一面に振りかけた
ひと皿十何万円もする料理を平気で注文するブラジル人と
会食をともにしたときなどは、
その金銭感覚のすさまじさに思わず耳を疑った。
ブラジル国内の貧富の差はさらに激しさをましているようだった。
それを反映しているかのように治安は相変わらず悪い。
私が滞在中の間にも私の知り合いはエレベーターに乗った瞬間、
先に乗っていた男3人に三方から銃を突きつけられ
金目のものをすべて奪われてしまった。
いつもは取られてもいい少額の紙幣をポケットにしのばせている彼も
そのときばかりはそうした準備をしておらず
かなりの金額と時計を取られてしまったという。
が、ブラジルでの思い出が暗いものばかりかといえば、そうではない。
今回は本当にたくさんの市場をまわったのだが、
そこで出会う人々は誰もが実に陽気で人懐っこく、
太陽の国ブラジルのイメージそのものだった。


さて、次回はブラジルで会った、とあるギャンブラーのお話を。