さて、ブラジル出張の続きを。
前にも書いたように、今回の出張は過酷を極めた旅となったが
その中の数少ない観光タイムがイグアス国立公園で過ごした2日間だった。
宿泊ホテルはトロピカル・ダス・カタラタスホテル&リゾート。
国立公園内にある唯一のリゾートホテルで
ピンクの外観が愛らしいコロニアル調のなかなか味わいのあるホテル。
2階からはイグアスの滝が一望でき、
ブラジル側の遊歩道はこのホテルの前からはじまる、観光には最適なホテルだ。


今回、私たちはアルゼンチン側とブラジル側の両方から
イグアスの滝をたっぷり見てまわる予定にしていた。
で、まず1日めはアルゼンチン側の国立公園へ入っていく。
私たちはブラジル側のホテルに宿泊しているので、
当然、アルゼンチン側へ行くには国境を超えなければならない。
が、通常のイミグレのような個々への質問等は一切なく、
ガイドがまとめて、パスポートを渡して、スタンプを押して終了。
アルゼンチン側の国立公園内はかわいい電車に揺られて
滝の近くまで移動。
その後、これでもかこれでもかというくらい
滝、滝、滝、そしてまた滝を見学してまわる。
というのも、イグアス国立公園の中には
大小合わせて200前後の滝があり、
最大高低差はなんと80メートル。
ナイアガラの滝、ビクトリアの滝とともに世界三大瀑布と称され
世界遺産にも登録されている。

が、ここイグアス国立公園でも自然破壊は確実に進んでおり、
かつては、「花嫁のベール」と呼ばれるほど
清らかで澄んだ流れだった滝が、
今では上流での伐採が進み、赤土が滝へと流れ込み
その土砂で水が赤く染まってしまっているのだ。
ある人は、その様子を見て
「森林の血」が流れ込んでいるようだと称した。
それもそのはず、滝の周辺で森林が残っているのは
イグアス国立公園内だけで
周辺はほぼ伐採が完了し、農地などになっている。
しかも、未だに密猟や盗伐が後を絶たず、
公園内の自然さえも今もまだ、危険にさらされているのだ。

↑飛行機からの写真からも周辺の伐採状況がわかる
また、2日めにはブラジル側の滝を見てまわったのだが、
明らかにアルゼンチン側とブラジル側では
観光客の数に差がある。
イグアス国立公園のうち、アルゼンチンが占めるのが80%で
ブラジルが占める割合はわずかに20%というのにだ。
これはアルゼンチンとブラジルとの間で生じている
イグアス国立公園に対するスタンスの違いに起因する部分が多い。
というのも、ブラジル側ではヘリコプターによる遊覧飛行を行っており、
これが観光の大きな目玉となっていて
遊覧飛行のあるブラジル側に観光客が集中する結果となった。
が、ヘリによる遊覧飛行は、自然景観を損なうだけでなく、
騒音による繁殖期の鳥類などに与える影響は非常に深刻だ。
で、アルゼンチン側ではこの遊覧飛行を禁止しているのだが、
ブラジル側では国際自然保護連合などの再三にわたる中止要請を無視し
今なお、ヘリ3台をひっきりなしに飛ばしている。
残念ながら、今回の出張でもヘリ遊覧が行程の中に組み込まれており、
私は事情を説明して、辞退したのだが、
他のメンバーからの賛同は得られず、
多くのその他の観光客と同じように遊覧飛行に興じていた。

↑これら野鳥の生態系に暗い影を落とす遊覧飛行
さらには、同行者の一人は「滝のライトアップはないのですか?」という
耳を疑う質問をして、私を興ざめさせた。
なぜにライトアップにより生まれる自然への弊害を想像できないのか。
世界遺産とは観光目的に登録されるものではない。
ライトアップすると滝がもっと美しく見える、
というその想像力の貧困さには同じ日本人として悲しくなってしまう。
が、実はブラジル側に観光客をとられたアルゼンチンが
その対抗策として、ライトアップや観光ゴンドラの設置を考えていたという話もあり、
両国に対する根本的な意識には大した差はないのかもしれない。
そしてその一方で、公園内には密猟者に射殺された
ある保護管の追悼碑がひっそりと建っている。
かれら保護管は国立公園内の自然を守るために
まさに命がけで戦っているのだ。
イグアスの滝のすばらしさを見るだけでなく、
それを取り巻くさまざまな問題点や
自然を守るために命をかけている保護管たちの活動を知る
スタディツアーのようなものがあれば、
きっと、世界遺産の意義はもっと深まる気がする。